岐阜県一の酪農家として、「飛騨牛乳」を守る ー 足立松吾 (有限会社足立牧場)

photo by 竹本純

高山市清見町で「足立牧場」を経営する、酪農家の足立松吾(あだちしょうご)さん。足立牧場は岐阜県下最大級の牧場であり「飛騨牛乳」総生産量の1/3を担っています。

父親の病気をきっかけに、若くして家業を継いだ足立さん。日夜、牧場で乳牛と向き合いながら描く足立さんの想いとは?飛騨牛乳の魅力と現状は?きっと読んだら飛騨牛乳が飲みたくなっちゃう。濃厚な飛騨の牧場物語をどうぞご覧ください。

父の遺志と共に、足立牧場を継ぐ

高山市新宮町で生まれたな。「足立牧場」を家業とする足立家の長男で、物心つくころから牛と一緒に育った。将来のことは考えていなくて、漠然と北海道酪農学園大学に進学したんやな。動物は好きだったけれど酪農業に特段の憧れはなくて、むしろ車関係の仕事に興味があったから、自動車関連の会社に内定をもらっていた。

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でも大学を卒業する直前、親父に病気が見つかったのな。それで家業を継ぐために内定をお断りして、まずは愛知県の大きな牧場で2年ほど修行してきた。結局、就職した1年目に親父は亡くなってまったな。ちょうど牧場の経営規模を拡大するタイミングで親父は無念やったと思うし、そっからの経営は本当に大変だった。

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実は親父が病床から、相談役として経営を任した方がいるんやさ。その方は二つ返事で引き受けてくれた。感謝と信頼しかないな。その人が親父の代わりに俺を怒ってくれる。自分にとって大きな存在なんやさな。そうして親父の友人たちや同業者のみんなに支えられたから、俺も腹を括れたかな。

 

それから10年間は壮絶やったけれど、おかげさまで今では、岐阜県で一番大きな規模の酪農家になった。足立牧場では400頭弱の乳牛を飼育していて、一日に約11トンの牛乳を絞っている。牛一頭当たりの平均乳量で言えば、質も量も成績良い牧場として認知されているのは嬉しい。岐阜県は酪農が有名な地域じゃないから、鼻を高くして言えることではないけどな。

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「飛騨牛乳」の産地を守るプライド

酪農の仕事のメインは搾乳。牛の乳搾りやな。朝5時の搾乳に始まり、深夜1時の搾乳で終わる。搾乳の他は牛舎の掃除とか、やっぱり生き物と関わる上でどうしても多少の汚さは拭えないな。搾乳した牛乳は「飛騨牛乳・飛騨酪農農業共同組合」を中心に卸して、「飛騨牛乳」として消費者の皆さまの元に届くわけやな。

 

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この「飛騨牛乳・飛騨酪農農業共同組合」は、実は日本でも古い歴史がある乳業メーカーで、「飛騨牛乳」は飛騨地方の17の酪農家生産された牛乳100%できているんよ。いや、当たり前に思うかもしれんけれど、実はほとんどの乳業メーカーはいろんな産地から牛乳を買って混ぜているから、生産者が特定できない。その点、飛騨牛乳は日本中探しても数少ない、生産者の顔が見える乳業メーカーなんやさ。

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その飛騨牛乳全体の1/3は足立牧場が生産しとる。つまり、足立牧場でなにかのミスがあったら飛騨の牛乳の流通が止まるわけやな。消費者の口に安全なものを届ける責任は重大やけど、飛騨牛乳や産地を守っていくためには質の良い牛乳を安定して生産しなければいけない。それはプレッシャーでもあり、誇りでもあるわな。

 

photo by 竹本純

 

飛騨って食べ物が美味しいよな。お肉も野菜もお米もお酒も。その根本は水と空気が美味しいから。牛乳はほとんど水分だから、そりゃ必然的に美味しい。質には自信があるから観光客にも飲んでもらいたい。でも飛騨に遊びに来て「牛乳を飲みたい」とは思っていないよな。「飛騨高山」や「飛騨牛」のブランドに比べたらイメージ負けしとるし、初見の方だと「パイン牛乳」は手を出しづらい(笑)。飲んでもらえたら美味しいはずだから、地元民の強い推薦が必要やと思う。

 

http://www.hida.or.jp/seihin_000.php
飛騨酪農共同組合 ー 製品のご紹介

 

乳価も上がっているし、自社ブランドでいろんな加工品を作れたりとか選択肢は増えている。当然、いろんなリスクはあるけれどな。足立牧場の規模拡大とともに、飛騨牛乳を広めていけたらうれしい。そのためには引き続き、地元の方に飛騨牛乳を愛してほしいし、面白いアイデアがあったらぜひ教えてほしいな。

 

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「足立牧場で働きたい!」そう言ってもらえる大企業へ

働く場所を探すときに、選択肢に「農業」は入っていないよな。もっと言えば、酪農に限らず農業全般は下に見られがち。気後れするかもしれないし、大変な割に給料が安いイメージがあるかもしれない。だけど、専門知識が必要なのはどの業界も一緒だからさ。

photo by 竹本純

 

地元の若者の就職希望に入る企業にしていきたいから、福利厚生を充実させていきたい。今年は5人の新卒社員を雇って月に7日休みまで実現できた。休みも自由に決められるから柔軟なシフトに対応できる。農業系の企業ではそこそこの方やと思う。「足立牧場で働いてるのいいなー!」って言われたい(笑)。夢や希望を持てる企業や業界にしていけば、従業員も誇らしいはず。

 

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酪農家や酪農に携わる関係業者がしっかり儲かる地盤を創っていきたい。儲けることは社会貢献の一つ。儲けたお金を地域で使って、税金も納められる。足立牧場も盤石ではないから、今は地盤を強化している段階。乗り越えていけたら面白いし、その原動力は従業員の笑顔や熱量かな。

親父と直接言い合えなかった後悔はあるけれど、親父が残してくれた人の繋がりや信頼に支えられている。今までは親父が築いてくれたものを引き継いだだけで、これからは俺が創っていく。岐阜県一の酪農家だと、みんなが胸を張って言えるまで成長したい。だけどおごらず謙虚に、魅力ある牧場にしていきたいな。それが親父との約束なんやさ。

photo by 竹本純

人生の荒波に翻弄されながらも、従業員と共に牛舎から夢を描いてきた足立松吾さん。飛騨人にとって馴染み深い「飛騨牛乳」の生産過程には、真っ直ぐな男の生き様がありました。その意思を受け継ぎ、飛騨牛乳を守っていくのは飛騨人一人一人なのかもしれません。なによりも足立さんの覚悟の深さと同じだけ、今日も飛騨牛乳は美味しいのです。

連絡先

足立松吾 (あだちしょうご)
https://www.facebook.com/shougo.adachi.52

足立牧場 公式ホームページ
http://www.adachi.farm/

足立牧場 お問い合わせはこちら
http://www.adachi.farm/inquiry.html

飛騨牛乳・飛騨酪農協同組合
http://www.hida.or.jp/index.php

 

この記事を書いた人

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丸山純平

丸山純平(まるやま じゅんぺい)
高山市出身。株式会社ゴーアヘッドワークス 企画/ライター
ヒダストのほぼ全ての記事を書いています。
最近は飛騨ジモト大学の事務局も担当。
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