コロナと共に生きる飛騨地方の未来を模索する特別企画「どうなる?!ウィズコロナの飛騨」
第二弾のゲストは、 日進木工株式会社 代表取締役社長の北村卓也さん!
飛騨の主力産業である「木工家具」製造の一角を担う日進木工さん。昨年、代表取締役社長に就任した北村さんがコロナの影響を受けて感じた思いや、強い危機感などを率直に語っていただきました。聞き手はヒダスト編集者の丸山純平です。
北村卓也さんのプロフィール
高山市出身、40歳。創業74年の木工家具メーカー「日進木工株式会社」の代表取締役社長。 インテリアの枠に収まらず、デザイン、アート、自然と哲学、いろいろなことを結びつけながら自分のライフワークを確立することを目指す。趣味はトライアスロンと、行きつけのバーでウイスキーを飲みながらジャズを聴くこと。
北村卓也さんのヒダストインタビュー記事はこちら
受け継いだのは 「飛騨の匠」の技術と美意識。飛騨高山の職人にしかつくれない家具がある
売上が大きく下がるも、StayHomeで家具需要が高まる
丸山純平(以下、丸山):早速ですが、日進木工さんへのコロナの影響はどうでしたか?
北村卓也(以下、北村):弊社は木工家具のメーカーですので、業種で言えば製造業に当たります。販売ルートの多くは家具屋さん、インテリアショップなどへの卸売がメインでして、緊急事態宣言の影響で卸売先のお店が閉店されていた時期の売り上げはひどかったですね。
丸山:日進木工さんのショールームも休業されていましたね。
北村:対面営業が難しくなりましたので、弊社の営業職もどう動いてよいのか困りました。海外出張の予定もキャンセルとなりましたので、海外の取引先とはテレビ会議でコミュニケーションを取っていましたね。
丸山:今、少しお話がありましたが、コロナ禍でどんな課題が見えて、どう対応されてきましたか?
北村:売り上げが下がったのも大変でしたが、弊社の社員でお子さんがいらっしゃる方も多いため、3月に突然決まった休校への対応が困りましたね。製造業なのでリモートワークとはなりませんから、一時的に弊社ショールームの一部を託児所スペースにしまして、子連れ出勤もOKとしました。
丸山:リモートワークが物理的に不可能で、かつ休業要請の対象外の業種は大変ですよね。精神面での不安もあったでしょうし…..。
北村:それでも弊社含む木工家具業界が幸運だったのは、StayHomeの期間に自宅や家具の見直しがされたことです!実は6月は売り上げが少しずつ戻って来ています。
丸山:なるほど!自宅で過ごす時間が圧倒的に増えて、リモートワークを継続される方も多くいらっしゃるので、より品質の高い家具は需要がありそうですね。
北村:高品質の家具への注目が高まっている面では、多少希望が持てる業界ではあります。しかし、いかなる産業もそうですが、これから本格的な不景気が訪れる可能性を考えると全く楽観視できないですね。
積極的な経済活動を進めなければ立ち行かない
丸山:北村さんが、このコロナ禍で感じたことはなにがありますか?
北村:正直言えば、4月の段階では未知のウイルスでしたので緊急事態宣言も政治的判断だったのでしょう。日々、最前線で働かれている医療従事者の皆さまへの感謝も忘れてはなりません。
しかし、現在の状況下であれば、感染時の重症化リスクが高い方々(高齢者や基礎疾患を持たれている方等)を除いて、積極的に経済活動をしていくべきだと僕は思います。
丸山:非常に言いづらいことを仰っていただきありがとうございます(笑)。決して過激な意見ではなく、地域の事業者さんの切実な本音ですよね。
北村:冷静に考えましても、コロナウイルスと共存する「新しい生活様式」の下で、観光業や飲食業等のサービス業は成立しませんよ。人と会うことや人が移動することを否定して、あらゆるコスト増を招くのですから。特にサービス業で成り立っている飛騨高山では、今後多くの事業者が立ち行かなくなり、就業者の枠は減ります。
丸山:おそらく第二波、第三波が起きてしまった時、もう一度の休業要請には応えられないですよね…..。
北村:自粛を行うリスクをしっかりと考えないといけません。もちろん生命が一番大事ではありますが、ゼロリスクは不可能です。とりあえず、一斉に自粛するのは思考停止ですね。ましてや、新しい生活様式という存在は経済を回復させる上で……(北村さんが熱く持論を展開されるも中略)
丸山:かなり盛り上がりましたが、文章化すると誤解を招きそうな内容ですので、上記文脈に共感する方は北村さんと飲みの席で大いに語らうということで……すみません(笑)。
北村:コロナ対策への疑問、鬱憤が溜まっている方はご連絡ください!飲み語らいましょう!!
コロナ禍でバーチャルショールームへ投資
丸山:でも本当に皆さんの本音は聞きたいですね。今後、日進木工さんでは新しい展開などはありますか?
北村:実はコロナ関連の補助金を用いて、バーチャルショールームもしくは、Googleストリートビューの拡張制作を検討しています。ネット上でショールームの中を自由に見学でき、3Dで360度見渡せるイメージです。気になる商品のピンをクリックすると、商品のWEBカタログに飛びます。
丸山:すごい!一気に未来感が高まりましたね!けっこう導入費用がかかりそうですが思い切ったご決断です。
北村:3Dカメラでかなりの枚数の写真を撮らなければならないため、決して安くはないです。しかし、いずれ導入したいと思っていた企画なので、今こそ取り組むチャンスですね。
丸山:他業界でも商材のバーチャル化は今後浸透しそうですね。例えば、不動産で賃貸物件の内覧をバーチャルにするとか……いろんなアイデアが思い浮かびます!
北村:コロナをきっかけに前に進まないとね。先行きが見えないからこそ、経営者の判断力が試される時期だと思います。
もしも第二波が起きた時、あなたはどう判断する?
丸山:今後、飛騨の街はどう変化していくのでしょうか?
北村:観光面では、隣接県に住まれているお客様から順に段階を踏んで受け入れていく流れですよね。でもあらためて、この街は観光産業の影響が根深いために多くの企業にとって苦しい時期が続きます。例えば、いくつかの建設予定だったホテルが取り止めになったりしていますが、弊社の家具も導入予定だったのが立ち消えました。そうした影響を数え始めたらキリがないですね。
丸山:すぐに景気回復とはならず、ジワジワと余波に苦しむイメージでしょうか。
北村:これから観光客が増え始めて、2月の奥飛騨の時のように感染者が観光に訪れていたことが判明したり、もしくは実際に飛騨から感染者が出た時にどう対応するかですね。何度も申し上げますが、一斉の自粛には大きな痛みが伴います。
丸山:これまで以上にシビアな判断が必要ですし、賛否両論は避けられませんね。一人の飛騨人として、今できることは何がありますかね?
北村:僕個人としては、馴染みの飲食店をどんどん応援したいですね。飲食店は早期にコロナの影響を受けたのに、お客さんが戻ってくるのにも時間がかかる業種です。朝日町もまだまだ閑散としていますが、地元民がお金を使ってなんぼですよ。
丸山:このインタビューはZoomでさせていただきましたが、記事がリリースされる頃には多くのお店も営業を再開されているはずです!ぜひ近日飲みに連れてってください!
北村:どんどん行きましょう!本当に声を大にして言いたいです。「外に出ましょう!消費しましょう!飲みましょう!」。ということで、ぜひお誘いください!
丸山:北村さん!ありがとうございました!!
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コロナへの率直な本音をお話いただいた北村さん。
人命が最も大事ではありますが、経済的に苦しい時期が続くと予想される中で、経済活動とのバランスを考慮せずにはいられません。感情的にならずに、冷静に物事を判断する力が試されます。
「どうなる?!ウィズコロナの飛騨」では引き続き、各業界の若手リーダーからの多様な視点で、コロナと共に生きる飛騨の姿を探っていきます。
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info@hida-st.com (ヒダスト担当者:丸山)