飛騨で駆け抜けた、青春と挑戦 ー 鈴木日菜子(斐太高校3年生 / HIDAKKO PROJECT.創設者)

 

高校生ながらHIDAKKO PROJECT.を立ち上げ、飛騨から全国に活躍の幅を広げる鈴木日菜子(すずきひなこ)さん。その活動の原点となった衝撃の出会いと、飛騨で仲間達と一生懸命創り上げた活動に迫りました。18歳の真っ直ぐな想いと物語をご覧ください。

「女子高生起業家」と出会った衝撃。

高山市石浦町で生まれました。小さい頃はすごくおとなしくて、人の目をとても気にして過ごしていました。高学年になるにつれて服に興味を持ち始めて、いろんなファッション雑誌を読み込むような、どこにでもいる普通の女の子でしたね。

 

大きなきっかけがあったのは中学2年生の夏、テレビのニュース番組で椎木里佳ちゃんの特集を観たことです。椎木里佳ちゃんは当時15歳で起業した「女子高生起業家」として有名で、今でも慶應義塾大学に通いながら会社を経営し続けています。「私と変わらない年齢でも、自分のやりたいことを形にしていいんだ!」その気づきは大きな大きな衝撃でした。

 

 

中学生は人間関係が難しいじゃないですか。学校とかクラスとか部活とか、小さな枠に囚われちゃう。でも椎木里佳ちゃんをきっかけに、未来や夢へと前向きに頑張っている人が世の中にはたくさんいることを知りました。だからこそ、クラスの中だけの権力保持者に気に入られるように、自分を隠して振る舞うなんて絶対におかしい。悪口も陰口も気持ち悪いし、私は楽しいことで笑っていたい。

 

学生の内からやりたいことに挑戦できる環境があったら意識が変わるんじゃないのかな。自分も周りの環境を変えるなにかを創ってみたい。そう思い始めたんです。進路希望調査に周りは「看護師」とか「美容師」とか名前が付いている職業を書く中で、起業することは目的じゃないけれどと悩みながら、自分で何かをゼロから創りたくて「起業したい」と書いて出しました。

偶然の出会いから「HIDAKKO PROJECT.」が立ち上がる。

斐太高校に入学した早々、「高山出身で面白い大学生がいるよ」と知り合いが丸山純平さんを紹介してくださったんです。丸山さんとSNSで繋がったら「イベントをco-ba HIDA TAKAYAMAでやるからおいで」と誘ってくださり、参加したのが【22歳、飛騨高山への想いを聞いてください】でした。

 

丸山さんが高校の同級生である谷口雅人さん・木元茜さんと主催した飛騨への想いを語るイベントで、私も時間をいただいて参加者の前でプレゼンさせていただきました。起業したいという私の拙い話を、みなさん真剣に興味を持って聞いてくださり、「場所を貸すよ」とか「こういう支援ならできるよ」と温かく応援してくださいました。

 

地元の大人と触れ合ったのは初めてだったんです。中高生が普段関わる大人たちって、家族や親戚、学校や塾の先生、後はせいぜいバイト先か両親の友人くらいですよね。私が今まで知らなかった「飛騨」がそこにはありました。同時に地元の高校生は、この飛騨を知らないままに地元を離れていくのかなと問題意識を持ったんです。

 

だけど一人だったら、不安が大きくて挑戦できなかったと思います。でも偶然にもそのイベントに参加していたもう一人の高校生が、当時斐太高校の3年生だった井ノ下朝陽先輩でした。朝陽先輩に出会い意気投合して「HIDAKKO PROJECT.」が始まったんです。あのイベントがなかったら、今の私は存在していないですね(笑)。

初めてのフリーペーパー制作に悪戦苦闘。

朝陽先輩と二人で団体名を決めて、どんなコンセプトで活動をしていくのか、3ヶ月かけて話し合いました。丸山さんにも相談したら「フリーペーパーを作ったら?」とポロっとおっしゃったんです。私たちもフリーペーパーに魅力を感じて、その場で創ります!と宣言しました。

 

斐太高校の瀬ノ上紗帆先輩と同級生の志水琳緒ちゃんもメンバーに加わり、打ち合わせを重ねながら企画内容を練る日々。商店街で飛び込み営業をして、協賛金も集めましたね。

 

取材はいろんな大人と関われて楽しかったですが、編集作業は本当に大変でした。パソコンに触れたこともほとんどなかったので「イラストレーター?PDFjpegってなに?」みたいな・・。本当に手探りでした。

 

ゼロどころかマイナスからのスタートでしたが、4人でなんとか創り上げて完成した実物を、この手に取った時の感動は一生忘れられないです。リリースイベントを開催したら大人の方もたくさんお越しくださって、自分たちの活動で素敵な人同士が繋がるのも感動的でした。

 

 

完成したフリーペーパーを、斐太高校の校門で手渡しで配布したんです。全員が受け取ってくれて「こんなことやっているんだ!」「高校生でもできるんだ!」そんな反応をたくさんもらいました。

 

先生たちには評判がよくないと思っていたら、校長先生がすごく気に入ってくださりお客さんにも配っているみたいなんです。当然異論はあったと思います。でも本当に多くの方に応援していただき、各社新聞やYahoo!ニュースにも掲載されました。

 

団体としての成長と、東京での経験

次号を作る第2期のメンバーを集めるために説明会を開催したら、メンバーが一気に14人になりました。斐太高校だけではなく、飛騨高山高校と吉城高校のメンバーも増えたんです。ほぼ毎週土日に集まってミーティングを重ね、組織体制も自分たちで考え直して、各部署とリーダーを作りました。

みんな主体的で意見も飛び交うから話がまとまらないんです。想いがあるから言い合いにもなって収拾がつかない。最終的に代表の紗帆先輩と副代表の私で決断する。人を動かすことの大変さを感じる日々でした。

 

それでもメンバーがあったかくて楽しかったです。それぞれの夢を語り合って、お互いに尊重し合える。自分が作りたかった理想の、学校の外のコミュニティでした。

 

 

2期では飛騨地域の中高生全員に届けようと、フリーペーパーを一万部発行しました。さすがに刷り過ぎましたね(笑)。でもすべての高校に配布することができて、反響もたくさんたくさんいただきました。「次のひだっこはいつなの?」と声をかけてもらうことも増えて、続けることでの変化を大きく感じました。

 

2期の入稿を終えてすぐに、東京のNPO法人ETIC.が運営しているTHINK BIG CAMPに参加しました。全国から集まった高校生が、起業家から与えられたミッションに5日間で挑み、ビジネスプランを考えるイベントです。私が挑戦したミッションは「日本のものづくりをサスティナブル(持続可能)に届けるには?」。

 

フィールドワークで千葉県にあるファッションブランド「Factelier-ファクトリエ-」さんの工場を訪問したんです。ファクトリエさんはどんな人がこの服を作ったのか分かる顔写真や、込めた想いを店頭で掲載していたり、手作業で作る工程も大切にされていて、明確なコンセプトがあるんです。それを知ると消費者側も買った服に愛着を持てるし、着ることで自分の思想も表現できますよね。

 

フリーペーパーと繋がる部分も感じました。私たちは伝えたい!って想いがあるから、手段としてフリーペーパーを作っています。ファクトリエさんの服も本質は同じなんですね。

 

 

なによりもTHINK BIG CAMPでの一番の収穫は、全国の志高い友人と出会えたことでした。一緒に挑戦する中で、悩んで悩んでプレゼンを創り上げて、熱く夢や想いを語り合った一生続く繋がりです。

 

500人の前でプレゼン、ようやく掴んだ達成感。

高校2年生になり、私が代表を引き継いで第3期の始まりです。先輩たちが受験で引退したためメンバーが5人にまで減り、寂しかったのをすごく覚えています。早速メンバー募集の説明会を開催したのですが、全然人が集まらない・・。色々上手くいかなくてあまり動けていませんでした。

 

 

夏休み前に高校内で説明会を開催してようやく再スタート。パソコンが足りなかったり、私自身が「代表」という役職に捉われ過ぎてメンバーとの関係性を築けていなかったり、また新たな壁にたくさんぶつかりました。

 

なんとかフリーペーパーを制作したけど、どこか消化不良のまま・・。そんな時に学生団体総選挙」のお誘いが来たんです。全国の多ジャンルの学生団体が集まって、団体の活動を紹介して交流する大規模なイベントです。

 

フリーペーパーでやりきれなかった分、挑戦したい。睡眠時間を削ってスライドを作って、プレゼンを練習しました。自主的にブラッシュアップ会も開催し、応援してくれる地元の大人達にプレゼンを聞いてもらい、改善点やアドバイスをたくさんいただきました。

 

 

当日は映画館のように大きなスクリーンを使って、500人の観客の前でプレゼンさせていただきました。周りが東大・京大・早稲田・慶応と名だたる大学生ばかりで、私たちは高校の制服で行ったので完全にアウェイでしたね(笑)。それでもやるしかない。覚悟を決めて挑んだら、すごくすごく楽しかったです。

そうしたらフリーペーパー部門でグランプリに選ばれて、賞金20万円といくつかの企業賞をいただきました。もっと頑張らなきゃなと身が引き締まりましたし、全国の大学生や企業の方とも繋がれたのは嬉しかったです。

 

 

4期の制作では、次期リーダーになる後輩に託して見守る立場で関わりました。後輩がみんな主体的に動ける子ばかりで、安心して引き継ぎできましたね。有名なお笑い芸人の「流れ星」さんにも単独インタビューできたりと、貴重な経験をさせていただきました。

 

 

自分らしく挑戦し、笑い合える未来へ。

立ち上げから携わってきた団体も後輩に受け渡して、いよいよ今年は3年生。受験の年です。今まで活動してきた内容や想いをアピールできるAO入試で、文系理系関係なく多様な分野を学べる大学を受験する予定です。

 

でも3年生だからと言い訳してやり残したことはないかな?そう考えたらやりたくなってしまい、市役所の方や各高校の生徒を巻き込んで「第1回ひだ!高校生会議」を先日開催しました。いろんな枠を超えて、地域の未来を熱く語り合える場って、なんでこんなに素敵でワクワクするんですかね。最高の時間でした。

 

 

当たり前ですが全国に地域はたくさんあります。都会とか田舎とか、偏差値とか家庭環境とか関係なく、全国の学生が自分のやりたいことに専念できる環境を創りたいです。私みたいに消極的な子でも、きっかけがあれば踏み出せるんですよね。そうしたきっかけが全ての高校生の身近になってほしい。人が変わることで街が変わる。それが結果的に地元の貢献にも繋がると思います。そのために何が必要なのかはこれから学んで見つけたいです。

 

 

飛騨の人に伝えたいことは、やりたいことがあったらやってみてほしい。いろんな言い訳を探してチャレンジできない人に出会うと、もったいないなって思います。失敗しても学びであって、やってみないと分からないことばかりですよね。小さな挑戦でも一つ一つの取り組みが集めることで、観光だけじゃない飛騨の魅力に繋がるはず。飛騨はすごく応援してくれるあったかい人が多いから、チャレンジし易い環境だと思う。年齢や立場、今の自分の環境に囚われずに挑戦してほしいです!

 

そんな偉そうなことを言いながらまずは自分自身から!今まで声を上げれなかった若者が、どんどんチャレンジしていくまちはきっと面白いですよね。私はこれからも、みんなで笑い合える未来のために挑戦し続けます

 

たくさんの人を巻き込みながら、笑顔で突き進む鈴木日菜子さん。誰かのために自分らしい人生を歩み続ける彼女の心にはいつも、故郷飛騨の大人たちの笑顔と声援が溢れていることでしょう。鈴木さんの輝かしい飛躍に、期待大です。

<連絡先>

鈴木日菜子(すずきひなこ)

鈴木日菜子Facebook

MAIL:hinacocohinakoko@gmail.com

 

HIDAKKO PROJECT.

HIDAKKO PROJECT.

MAIL:hidakkoproject16@gmail.com

 

この記事を書いた人

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丸山純平

丸山純平(まるやま じゅんぺい)
高山市出身。株式会社ゴーアヘッドワークス 企画/ライター
ヒダストのほぼ全ての記事を書いています。
最近は飛騨ジモト大学の事務局も担当。
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