たくさんの笑顔が見たい。 その願いを叶えられる形がブライダル ー 遠藤佐知( ドレスショップ マリエクチュール 代表)

飛騨高山で、婚礼衣裳全般を扱う「ドレスショップ マリエクチュール」を経営する遠藤佐知さん。

故郷の神戸から知り合いのいない高山に嫁ぎ、それまで働いてきたブライダルのキャリアを生かして起業します。それから7年目を迎えた今、遠藤さんが語るブライダルと飛騨への想いをどうぞご覧ください。

譲れないほど大好きな「衣裳」を、仕事にする

兵庫県神戸市の出身です。小さい頃から綺麗なものや可愛いものが好きで、物を作ることも好きでした。6歳のときにお裁縫がしたくてたまらず、母に針と糸をねだったら、ティッシュと爪楊枝を渡されまして・・。「どうしてやらせてもらえないんだ!」ってすごく怒りましたね(笑)。

自分が「こう」と思ったことは絶対に譲らない、頑固なところは昔からあったような気がします。

お裁縫が好きという気持ちが続いているのか、「衣裳」にずっと携わってきました。衣食住を幅広く学べる兵庫女子短期大学生活科学科に入学し、ブライダルの衣裳を扱う「ワタベウェディング」でアルバイトをしていました。

卒業後は好きな洋服ブランドのショップ勤めを経て、アルバイトをしていたワタベウェディングに戻ります。挙式に向けてお客様がドレスを選ぶ際のサポートをしていましたが、「結婚式当日の様子が見たいな・・」と、内心とても物足りなさを感じていましたね。

次に「ホテルニューオータニ」で結婚式をするお客様専門の衣裳店に勤め、ドレスに関わる作業はすべて経験することになります。

その後「ハーバーブレスドコート」というレストランに勤めたのですが、ウェディング事業もおこなっていたために衣裳兼ウェディングプランナーの仕事を任されました。お客様と関わりたいという願いが叶い、より近くでサポートできてうれしかったですね。

好きワクワクを追い続けていたら、将来必要な知識と経験が自然と身につきました。そんなふうに一生懸命仕事をしていたわたしですが、主人が飛騨高山への帰郷を決め、泣く泣く退職することになります。

友人のオーダードレス作りから、マリエクチュールを立ち上げる

飛騨に来て、時間の流れがゆっくりな場所だなと感じました。半年ほど飛騨を探索したら「働きたい!」と思いが湧いてきまして、フラワーアレンジメントの資格を生かしてブライダルの小物作りをはじめました。

そうして3年ほど経った頃に、「友人のオーダードレス作り」という最大の転機が訪れたんです。

わたしは小柄で、既製のドレスが合わなかったため、自分の結婚式のドレスは大好きなものだけを詰め込んだ、世界に一着のドレスをオーダーメイドしました。

そんな経緯もあり、「どんなドレスもサイズが合わない」と友人が困っているのを耳にして黙ってはいられず、オーダードレス作りのサポートをします。

喜ぶ顔が見たい一心で取り組み、「できた」が「もっとやりたい」に変わっていき、ついには1年半準備して「マリエクチュール」をオープンしました。友人のドレス作りがなければ、今の仕事はしていないかもしれません。

オーダードレスショップとしてスタートしましたが、オーダーレンタルとしてお店に残るドレスが着々と増え、さらに和装衣裳が入り、留め袖、紋付きと幅が広がりました。

現在はさまざまな着こなしに変えられる「カスタマイズドレス」がご好評をいただいています。 長年培ったお裁縫の技術で、体型にフィットするようにドレスを最大限調整できます。

また、思わず一目惚れしてしまうようなドレスが揃うお店でありたいと思っているので、トレンドにも鋭く目を光らせています(笑)。

マリエクチュールは衣裳店ですが、衣裳に関すること以外のサービスコンテンツも充実しております。プランナーの経験を生かして結婚式の流れを前もってお伝えしたり、いろんなご提案もさせていただき、後悔のない結婚式をお迎えいただけるようサポートしています。

ひとりではじめたマリエクチュールでしたが、今年2月には営業スペースも拡大し、スタッフもわたしを含め6人体制になりました。それぞれの長所を存分に生かしてもらえるような仕事分配を心掛けています。スタッフの笑顔もまた、わたしの大切なモチベーションです。

震災をきっかけに、「笑顔が見たい」を形にするブライダル

重要な人生の転機はもうひとつあります。1995年(平成7年)1月17日に発生した、阪神淡路大震災です。

昨日までともに笑い合っていた友人が亡くなり、「大切な人との一瞬を大切にしたい」と強く思うようになりました。

また、壊滅状態となった街は人々から笑顔を奪い、「関わる人には笑顔でいてもらいたい」というわたし自身の願いに変わりました。その願いをわたしの大好きな「衣裳」と掛け合わせて、叶えられる形がブライダルだったのだと思います。

 

「結婚」の価値観が多様化する中、ブライダル業界にも多様化の波が押し寄せています。飛騨においても、従来の画一的な結婚式の形から、「自分たちはどうしたいのか」を叶える形にしたいと望む方が増えていくはずです。

実はわたしは、結婚式だけにはこだわっていません。「笑顔が見たい」 という想いを叶えるため、ひとつ完成させた形としてブライダルがありますが、想いがぶれなければ形にはこだわりません。

LGBTQ(セクシャルマイノリティ)フレンドリーのお店を目指して勉強会をしたり、マリエクチュール自身がブライダルの垣根、飛騨の垣根を超え、純粋な笑顔が生まれる場所でありたい。

芯はあっても柔軟に。その時代の変化や求められるものに対応し、ひとつひとつの想いを形にしていくお手伝いをしながら、たくさんの人の笑顔を見ていられたらすごく幸せです。

 

また、今では飛騨を第2の故郷だと思っています。たくさんの繋がりに助けられてここまでやってくることができましたし、お客様との関わりの中にある飛騨特有の繋がりの深さと温かさは、わたしにとってとても心地の良いものです。

お客様の「結婚」というストーリーのはじまりに関わるのがわたしの仕事ですが、その繋がりは結婚式で終わるわけではありません。お客様の「その後のストーリー」をずっと見続けられるのは、わたしがこの飛騨に住んでいるから。

何年経ってもお客様の笑顔を見ていられるように、マリエクチュールを愛される場所として、たくさんのハッピーと笑顔が拡がる場所として守り続けていきます。

「関わる人の笑顔が見たい」輝く笑顔で話す遠藤さん。

多様化するこれからのブライダル業界においても、シンプルに人の笑顔のために尽力する姿勢を貫く遠藤さんは、どんなオリジナルな想いにも幸せにも寄り添い、新たな形にしつづけていくのでしょう。

飛騨は、もっともっと幸せな地域になる。そんなふうに感じられたインタビューでした。しなやかに、しかし芯を持ち前進し続けるマリエクチュール。これからも目が離せません。

連絡先

遠藤佐知(えんどうさち)
https://www.facebook.com/sachi.endo.98

ドレスショップ マリエクチュール
http://mariecouture.jp/

マリエクチュールのドレス日記
https://dressmariecouture.hida-ch.com/

Instagram
https://www.instagram.com/mariecouture.jp

この記事を書いた人

ライターMEGU

ライターMEGU

ライターMEGU (あかおめぐみ)
フリーライター、カウンセラー、中日新聞高山北部専売店記者、マリエクチュールスタッフ

高山生まれ高山育ち。文章を書くことと対話が大好きです。