イラストを究める ー 河野政二 ( 株式会社ゴーアヘッドワークス / Illdirt イルダート )

 

飛騨高山のデザイン事務所「株式会社ゴーアヘッドワークス」で活躍するイラストレーター&デザイナーの 河野政二 さん。圧倒的な画力と巧みな色遣いを武器に、絵心あるデザインを手がけます。

 

そんな河野さんがデザインの仕事に至るまでは、何度もの挫折と長い下積み時代がありました。河野さんが手がけた代表的な作品とともに、デザイナーへと至るストーリーをご覧ください。

小さな頃からひたすら絵を描いてきた

1991年、ブラジルはサンパウロで生まれました。2017年に日本国籍へ帰化するまではブラジル国籍で、本名はKAWANO FLAVIO SEIJIでした。とは言え、祖父母は日本出身でブラジルに渡った日系人なので、見た目は日本人です。

 

僕が1歳の時、両親と共に日本に移住しました。物心つく頃には岐阜県瑞浪市に引っ越しまして、その後はずっと瑞浪で育ちます。

 

5歳の頃、保育園のねんどの授業で作った「カンガルー」が市のコンクールで評価されて、周りにとっても褒められました。今でも嬉しかった気持ちを覚えていまして、創作が好きになった原点かもしれません。

 

小学校3年生の時には、アニメの「ワンピース」が大好きになり、真似して絵を描き始めました。Mステで観た「SOUL’d OUT」にハマり、HIPHOPが好きになったのも同時期ですね。

 

 

中学校ではバスケ部に入るのですが、体育会系の人間関係に馴染めなくてすぐに辞めてしまいます…..。両親にパソコンとペンタブを買ってもらい、放課後はネットサービスの「お絵かき掲示板」や「お絵かきチャット」でひたすら絵を描いていました。

新卒で入社した印刷会社を3ヶ月で退職

もっと絵を描くことを勉強したいと思い、多治見工業高校デザイン科へと進学します。音楽活動にも傾倒してまして、バイト代を貯めてDJセットを買い、他校の友人とサウンドチームを結成して活動していました。

 

 

音楽も好きでしたがやっぱり将来は絵やデザインの仕事がしたいと思い、やがて「名古屋総合デザイン専門学校グラフィックデザイン科」へと進学します。

 

専門学校の授業はとても新鮮で楽しかったです。広告、キャラクター、Webデザイン、コピーライティング、そんなイラスト以外の仕事も魅力的に思えましたし、なによりも創造的に考えることの楽しさを知りました。

 

就職活動では専門学校の推薦をいただいて岐阜市の印刷会社に就職し、一人暮らしを始めます。

 

カタログを作成する業務でしたが、デザインというよりは与えられた原稿通りに値段や写真を入れ替えるような仕事でした。また、一日中誰も喋らない会社だったので、とにかくやりづらく感じます。

 

 

週末は息抜きにと岐阜の町を散策し、アパレルやクラブ関係の人と繋がりました。しかし入社して3ヶ月、もう鬱になりそうだったのでいっそ辞めようと決意。上司に辞めたい旨を話して、激怒されながらも退職します。今でも最低の辞め方をしてしまったと思います。

 

その後数ヶ月ほどは、引っ越し屋やファストフード店でバイトして食いつないでいました。両親には会社を辞めたことを内緒にしていましたが、思い切って相談して瑞浪の実家に帰ります。

似顔絵師として、ひたすら絵を描く日々へ

バイトをしながら就活を始め、デザイン事務所へひたすら面接に行きましたが、実務経験がないため落ち続けます。そんな時にふと、専門学校の同級生が「Ark Design」のHPのイラストを見ていたのを思い出しました。

 

一緒に働きたいとは恐縮すぎて思いませんでしたが、とにかく話を聞きたくて会社を訪問しました。そこで紹介されたのが、似顔絵チーム「お絵かき隊」でした。

 

 

ちょうど開催されていた展覧会を見に行き、絵が描ける仕事ならやってみたいと面接を受けます。研修では「一週間で100人の似顔絵を描け!」と厳しい課題を与えられましたが、焦ってひたすら描いていたらまともな絵になってきました。

 

そうして2012年12月30日、似顔絵師としてデビューします。初日の売り上げはモノクロの似顔絵を3人分で2,400円だったのを今でも覚えています。

 

それからは似顔絵を描いて売る生活でしたが、お客さんの顔をじっと見ることが苦手でなかなか似せて描くことができませんでした。そんな時、愛知県で開催された似顔絵の大会に参加します。似顔絵の大会はまるで格闘技のようで、世界レベルの似顔絵に衝撃とロマンを感じました。絵が上手くなりたいと本気で志したきっかけです。

 

そして家でひたすら絵を練習する日々が始まります。リアルに、可愛らしく、デザインちっくに……似顔絵の大会で評価されそうな様々な手法を試しました。

イラストを究めるためにデザインの道へ

ですが徐々に、もっと魅せ方やデザインを勉強しないと良い絵を描けないことに気づきます。似顔絵だけでは今後食べてはいけないだろうという危機感もあり、デザイン関連の仕事をしたいと思いました。

 

運良く、お絵かき隊OBメンバーの大村順さんに声をかけてもらい、2018年の5月に株式会社ゴーアヘッドワークスに入社します。

 

 

デザインは習得したかった技術ですが、入社当時は分からないことばかりでした。悩むことがたくさんあるし、作業スピードも遅いけれど、社内の人間関係に助けられて今まで続けられたなと思います。

 

それと、今の会社に入社してから真剣に自分の将来や目標を考えるようになりました。

 

デザインの仕事を始めても、自分のイラストをより良く魅せるためのデザインという位置付けは変わりません。作品を創作していきたい意欲も衰えません。

 

自分のブランドを立ち上げてみたい。創った作品のブランディングにも挑戦してみたい。そうして生まれたオリジナルブランドが「Illdirt イルダート」です。

生まれたオリジナルブランド「 Illdirt イルダート 」

「Illdirt イルダート」は、大好きなHIPHOPのドロっとした雰囲気にストリートの濁りを混ぜて、厚みのある線で描き込んで…….そんな自分の好きなポイントを詰め込んだブランドです。

 

 

生意気かもしれませんが、売れるための絵を描くのではなく、僕が描きたいものを好きなように描きたいんです。

 

それが最近では、会社のショーウインドウに飾ったIlldirtの商品を一目で気に入って購入してくださる方が多くて、自分の好みに共感してもらえるのは嬉しいですね。

 

 

小さい頃から絵を描くのは大好きでしたが、人付き合いは苦手でした。もっと言えば、誰かのために描きたい気持ちもなく、ただただ自分の理想とする絵を追求したかったのです。

 

それは今も変わりませんが、そうした絵を描くことでの自己表現が、結果的にコミュニケーションの手法となったのは不思議な気がします。

 

とは言え、Illdirtはまだまだやりたいことの30%くらいです。HIPHOPが好きなので有名なラッパーの方ともコラボしたい夢もあります。

イラストを究める道は遠く長いので、僕は今日も描き続けていきます。

小さな頃から夢中になった「好き」を手放さずに、ただただ愚直に続けてきた河野さん。「イラストを究める」。そう誓った河野さんは、今日も絵を描き続けます。

連絡先

Illdirt イルダート オンラインショップ
https://illdirt.theshop.jp/

河野政二 Instagram
https://www.instagram.com

この記事を書いた人

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丸山純平

丸山純平(まるやま じゅんぺい)
高山市出身。株式会社ゴーアヘッドワークス 企画/ライター
ヒダストのほぼ全ての記事を書いています。
最近は飛騨ジモト大学の事務局も担当。
一緒に飛騨を盛り上げたい方募集中!好きな食べ物はチーズケーキ。